鳥のさえずり、虫の声、木々の香り。  海も山も川も森も畑もある加賀の暮らしでは、五感を通して季節が身体にしみ込んでくる。 神社に参拝すれば、カニやトカゲ、キツネやヘビと出会うこともある。 そんな自然との日常が、自分の感覚を少しずつ取り戻させてくれる。 30年以上、都会で育ち、働いてきた自分にとっては、この暮らしは驚きの連続だ。 いま僕は、障害のある方たちと共に働く会社を経営している。 「働きやすさ」や「続けやすさ」を第一に考え、関わる人や仕組み、 自然環境も含めて“犠牲にならない”あり方を模索している。 だが、それは東京で仕事に没頭していた頃の自分からすれば、遠回りにすら見える考え方だった。 満員電車に揺られ、時間に追われ、「早く・多く・効率的に」という軸で生きる毎日。 起業とは、事業をいかにスケール(急成長)させ、いつEXIT(上場や売却で利益を確定)するか。 そんな話題が当然のように語られていた。 でも今、僕の行動も考え方も、まるで陰陽が反転したように変わっている。 その転換の起点には、「侍の思想」との出会いがあった。

-KUDEN rinlife Magazine vol.1 

Writer:日野 信輔