
MAY 12, 2023
Special interview
豊竹咲寿太夫
豊竹咲寿太夫
×
Takahiro Sato
佐藤貴浩
# 03
Creators cross talking
Ambassador × Designer
Ambassador
×
Designer
"伝統の未来"
佐藤:
あと僕らが知り合ったきっかけが文楽、人形浄瑠璃なんですけど
今回初めて咲寿さんには…僕も浴衣を着させて頂いて
これ実はうちのSamurai Mode Jacketを咲寿さんと僕で着ているんですね。
その他に実は咲寿さんには新型のスカートだったりシャツを着て頂いて
前後に撮影させて頂いたんですけど
KUDENの服はどうですか?
僕としては着物大好きなんですけど、
実はこれ咲寿さんに着付けて頂いたんですけど
なかなか難しくて、うちのお客さんの中では着付けができるんだけど
お母さんだったりとか、働いててなかなか着物が着られないんだって人が
買ってらっしゃって
「こういうの着たかったんだ」って方がいらっしゃったり
あとは海外で、どうしても着付けというものがあることも知らない。
「着物着れるよ」「いや着物っていうのは…」って
気持ち的には着られるのであって
実際のテクニックを知らない方が多くて
そういう方が「これだったら着られる」と。
実はうちのお客さんでフランスのお客さんがいらっしゃって
その方は、ヴィンテージの着物とかがフランスでも売ってたりするんですけど
日本人の女性って昔の人は小さいじゃないですか。
咲寿:
はい。
佐藤:
なので海外の女性にヴィンテージはなかなかサイズが合わない。
咲寿:
そうですよね。
佐藤:
それで着られなくてずっと悔しかったと。
このうちのジャケットなら着れるわって。
実はその方もう3着持ってらっしゃるんですよ。
咲寿:
凄いですね。
佐藤:
京都の旅行に着て行って褒められたわよって。
咲寿:
凄いですね。おおー。
佐藤:
これどこのって言われて、日本で、KUDENでって。
本当に着物ライフをエンジョイしているっていう様な
その為に作ったので嬉しいなって思ってたんですけど、着物を日常使いとして、所作として身につけている咲寿さんから見て、KUDENの服はどうですか?
なんか緊張してきた。
咲寿:
着物というとやっぱりハードル高く思われがちだと思うんですよね。
私たちなんかは日常的に浴衣姿で普段暮らしてますし、楽屋はずっと浴衣で生活してたりとか
着物を着る機会っていうのは相当に多い。
殆ど日常生活の中に着物がある人間ですので、そういう人間からすると
着物っていうのはやっぱり日本人が元々着ていた服装で
とある物語で着物っていうのはスーツのようだって言っている物語があって
しっくりくるなと思ったんですけど、フォーマルからカジュアルまで
浴衣なんかは凄くカジュアルな格好ですし、
フォーマルな格好になると
昔の人は家紋というものがありましたから
そういうものを入れた黒紋付という物を着て、袴を履いて。男性だったら。
羽織だったり、武士とかになると帷子をつけたりするわけですが
そういうところまできっちりした服装なので
タキシードに相当する服装ですね。
凄く汎用性が高い文化だと思うんですよね。
元々町人が生活している服装だった訳なので。
なので、現代その着付けでたくさん色んなハードルが高いようなこともあるとは思うんですけれど
本来は結構気軽に着て頂ける物であって欲しいなと思ってたんです。
佐藤:
僕もおっしゃる通りだと思います。
咲寿:
で、なかなかそういう物がない。
普段町に着て行くにしてもなかなか自分でも着られないという方も多いでしょうし
帯1つ結ぶのも昔はやっぱり生活の中にあったものなので
当たり前の事だったのが、やはり明治維新後段々服装が変わってきて、
洋装が入ってきて、着物が離れていくと共に
やはり帯を結ぶっていう事も日常生活でなくなってしまいましたので。
佐藤:
確かに。旅館に行く時くらいですよね。
咲寿:
はい。
だから本来は日常生活だった事が今ではハードルになってるという事で
最近こういうカジュアルな着物って言うんですかね?
佐藤:
段々ちょっとずつ出てるんですけどね。
咲寿:
はい。ちょっとずつ出てるんですけれども、
今日着させて頂いて、凄く…身体に馴染むんですよね。
佐藤:
ありがとうございます。
パターンを、今本当に咲寿さんのお話で出たのが、
最初の僕のKUDENの服も着物風ですけれどそれって伝統的な着物を着る勇気だったりとかきっかけだったりになってもらいたいなと思って。
咲寿:
そうですね。
佐藤:
洋服なんだけど着物の、今回スカートだったら八掛だったり
こういう所も、実は普通着物風だとここ取っちゃうんですよ。
咲寿:
そうですね、大体ないの多いですね。
佐藤:
でも僕ここを残したいんですよ。
咲寿:
嬉しい。
佐藤:
ない方が実は動きやすかったりとかですね、
実はデザイナー的に言うと値段が下げられるんですよ。
咲寿:
そうなんですか。
佐藤:
生地の量を…減らしたりとか。
咲寿:
なるほど。そもそもの。

佐藤:
実はここの縫製が凄く難しかった。
垂れがでちゃうんですね。
やっぱり違う布を縫い合わせてるので、これって日本の縫製技術が凄いから出来る事なんですが、何故残すのかというと、
着物の元々の良さを知ってもらうきっかけの服なんです。
咲寿:
それが嬉しくって。
よく着物風の色んな服が最近出てるのを見ていると、袖がないとか
着物って元々平置きにして畳める物だった。そういう所から出発してる物なので袖があって嬉しいです。
佐藤:
僕もこれは何でとらないんですか?って聞かれるんですけど、とりたくなかったんです。
ただ現代は気候も変わってきたりしているのでうちのお客様には暑い国の人もいるんですね。
実はこの身八つ口なんかは男性の着物にはなかったりするんですけれどもわざとあけて、現代に合わせたりとか。
着物はT字型、やっこ型なんですけれど
咲寿:
そうですね。先程言ったみたいに
平で畳める物なので直線直線で全部作られてるんですよね。
なので着たときにボワッとすることが多いですね。
佐藤:
パターンを1年勉強して、着物を色々研究して作って肩落ちをするような。
例えばこれを1本、脱いでしまうとこれ今普通の浴衣なんですけど、
平置きできる物はこういう風な形になっちゃうんですけど、このジャケットを着て頂くと肩が落ちるように…。
咲寿:
本当にね。着させて貰ったら凄い身体にスッと馴染むんですよね。
気持ちいいです。
佐藤:
あとは今咲寿さんが仰ったように、着物のデザイナーとして凄いなって思ってる所は、
ワンデザインなんです。
咲寿:
そうですね。
佐藤:
フォーマルからカジュアルまで
そんな洋服ってなかなかないですよね。
文化の継承者としての主破離があって
現代の気候や生活に合った着物があっても僕は良いと
咲寿:
良いと思います。
佐藤:
願いを込めてこれを作ったので
咲寿さんに褒められるのって滅茶苦茶嬉しいです。
やっぱり似合うなぁって。
咲寿:
ありがとうございます。
着物着てる人間からすると
やっぱり着物という文化自体がなくなってしまうのが1番怖い事ではあるので。
元々日本人が洋服を着るなんて150年くらいの話ですから。
ずーっと1000年、2000年
ずっと着てきた物ですからやっぱりなくなって欲しくない。
けれど、着物自体も室町時代ぐらいからアップデートを重ねて
時代時代で絶対形が違うんですよね、これもまた。
なので今、色々色んなルールがある
という風に思われてる着物なんですけど
これも言わばその
江戸末期から明治時代ぐらいに作られて
昭和の時にちょっと着物ブームがあった時に作られた
高尚なルールみたいな物があるんですけどこういうのは守りつつ、
着物文化として浸透していく為には
時代に沿ったアップデートが必要だと思っています。
佐藤:
仰る通りです。
咲寿:
こういうパターンの肩がスッと馴染む形であるとか
今、日本がねもう暑い気候になってきてますから
ここが開いていたり、別に構わないと僕は思うんですよね。
だからその元々のルールに沿ったら男性は開いてたらあかん
という概念に陥りがちですけど
やっぱりこの着物という文化が現在にどういう風に沿っていくか
ということを考えるとやはりその時の生活スタイルに合った
アップデートの仕方をしていくのが凄く嬉しいんです。
佐藤:
僕も着物大好きで、でも僕あんまり着れないんですよ。
悩みがあって、母の形見を見て思い出して
一緒に悩んでいる人がいるっていうのと
咲寿さんも、僕とかも介護やられたりとか色々ある中で
着たい思いはあるけれど、
着れるからこそあの一手間がちょっと今は…
咲寿:
はい。
佐藤:
よく着付けのテクニックの事を
こうしたら簡単に着れるよっていう話とはまたちょっと違って
咲寿:
はい。
佐藤:
気持ちの問題だったりする時に、
これ1着羽織った時に凄く勇気が出たんですよ。
本当に咲寿さんが仰ったようにTPOさえ間違えなければ
もっと自由に楽しんでいきたい。
咲寿:
本当にそうだと思います。
佐藤:
どっちも学びたいです。
咲寿さんともお友達になったので
咲寿さんの演目を皆で着物を着て観に行こうとか。
咲寿:
嬉しいです。
佐藤:
やりたいなって話してるんですけど、
そこでは勿論フォーマルでキチンとやって
その終わった後はもう少しカジュアルにとか。
そういう楽しむっていう事が何より大切かなと思いました。
咲寿:
そうですね。
佐藤:
最後なんですけど、
咲寿さんは今若くして大変な道を歩まれて
今後の夢だったりとか
ご自身の夢でも構いませんし、人形浄瑠璃の未来という事で
思いを聞かせて下さい。

咲寿:
先程の話から少し似通った話になりますけれど。
人形浄瑠璃、文楽というこの芸能の培ってきたもの
江戸時代の、元禄時代ぐらいからずっとずっと引き継いでそれぞれ来て
受け継いで来たものが今でもやられている訳ですけど
未来今後100年、200年残らなければ意味がないので。
まず残したいという事と、
それに伴って、新作とかも今でもやってるんですけど
新作がいくつもある中で何か1つが次の100年観た時に古典になっているっていう
そういう未来を残したいという風に思います。
佐藤:
では新作聴けることがこれから…
咲寿:
観れたら良いですねぇ。
佐藤:
咲寿さんの新作の本をお待ちしております。
咲寿:
着物の話と一緒で
文化自体を残す事に、古いものに固執する訳ではないですけれど
古いものだけを見るのではなくて
現代の人たちの視点に合ったものを作って
それが未来から見たらその当時の現代のものだった、
未来から見たら古典になるっていう
そういうものを残したいです。
佐藤:
咲寿さんのお話を聞いていると
やっぱり凄くご自身が楽しもうという思いというかパワーを凄く感じて
お客さんにも楽しんでもらいたいっていう
絵を描かれたりとか色々紹介されたりとかしてると思うんですけど
今の時代の人たちが楽しむものと100年前のものは違うんだから
お作法も残し、今の人が楽しめる人形浄瑠璃っていうものを築かれていきたいっていう
咲寿:
本当にその通りです。
佐藤:
そんな思いをひしひしと感じて…
新作を観たい!と思っております。
咲寿:
ありがとうございます。
なので、昔、その当時やってた時には今の人と違うところで
笑ったり泣いたりしてたかもしれないですね。
違うところで共感したかもしれないですけれど
それがずっと残ってるって言う事はその物語の中に時代時代に別の視点で見ても共感できる部分が。
佐藤:
普遍的なものって事ですね。
咲寿:
その普遍っていうものは、
時代時代でアップデートされても同じ塊の中に、どこか拾い上げられるものがあるという
これが普遍だと思うので、
今の人たちに自分がやっている古典のものを伝える時でも今の人たちが見た時に、
どこに共感し頂けるかなという事を頭においてあらすじを紹介させて頂いたりとか趣味のイラストで描く時にそこをフューチャーしたりとか、そういう風な事をしています。
佐藤:
さっき本を見させて頂いたんですけど、
そこにも色々書かれたりしていて、多分そこには今みたいな思いも乗ってどう演じたらっていうのを思いながら多分演じようと積み重ねていらっしゃるんだなと思いました。
今日はお時間ありがとうございました。
咲寿:
ありがとうございました。
佐藤:
第2弾では、僕自身ももっと聞きたいことがいっぱいあるので
宜しくお願い致します。今日はありがとうございました。
咲寿:
宜しくお願いします。ありがとうございました。
佐藤:
皆様御清聴ありがとうございました。


— Everything has been passed down from generation to generation through repeated changes.
豊竹咲寿太夫
[Greeting]
着物とは「着る物」。実にシンプル。
時代の流れで着る物のスタイルが変化するのは必然。
かつての生活に寄り添った機能美に裏付けられた着物の様式美を、自分達が生きる現代の生活へ昇華した機能美には普遍と革新が同時に存在している。
古いものにも新しいものにも不可逆的な時間の流れの中に境目はなく、全ては変化を繰り返して脈々と継がれてきたものだ。
それが口伝。
ようこそ、さあ、ご一緒に。
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