これは家族の自立の物語だと思う 
【3月26日公開 映画「旅立つ息子へ」レビュー】



この作品を一足先に先行試写として2月に拝見させて頂いたきっかけは、作家、教育ジャーナリストのおおたとしまさ先生からの紹介でした。

数年前におおた先生と常見先生主宰の働き方改革のイベントに登壇させていただいたご縁で推薦くださったのがきっかけでです。


最初、何故僕にこの映画の試写とコメントのお話をおおた先生が紹介したのが何故なのかわからなかったのですが、担当者の方からいただいた映画の概要を読んだ時、愛する息子のために、キャリアも捨てて、子育てに人生を捧げてきた元グラフィックデザイナーの父という設定を見てなるほどと、すぐに腹に落ちました。


おおた先生は私が一度僕が一度会社を畳み離れて暮らす障がいある息子の為に将来働く場所としてKDUENを立ち上げた経緯を知ってくださっていたのです。


僕は身につまされる思い出この映画に見入りました。

<映画のイントロダクション>

子育て卒業の時がいつか訪れることは、わかっていた。

父と息子の実話に基づく絆の物語に、涙と共感!

息子に全人生を捧げた父が辿り着いた答えは……

世界を涙で包んだ俊才が紡ぐ、爽やかな旅立ちの物語

世界でいちばん愛する息子のために、キャリアも捨てて、子育てに人生を捧げてきた元グラフィックデザイナーの父。金はなくても愛がある!と田舎に引っ込み、2人だけの世界を楽しんできた。

ところがある日、彼らに突然の試練が訪れて……。自閉症スペクトラムを抱える息子を全力で守る父と、父の愛を受け心優しい青年に成長した成人を迎える息子。

2人はどうやって試練を乗り越えていくのか。


男手ひとつで子供を育てる物語には、『クレイマー、クレイマー』(1979)、『アイ・アム・サム』(01)、日本でも『ステップ』(20)と、多くの名作が作られてきた。これらは母がいない父子のハプニングや苦労を描いた父子の物語である。本作『旅立つ息子へ』は自閉症スペクトラムの息子を守るために、父のアハロンがすべてを投げ打って子育ての世界に飛び込んだ点が、これらとは一線を画している。こだわりが強いのに意思表示は弱く、目も合わせてくれない息子との二人三脚は、イクメンという軽い言葉で表現できるものではない。自分がいちばん息子を理解していると胸を張る一方で、常に「自分がいなくなったら……」と不安に駆られるアハロン。揺れ続ける父と、ゆっくりと成長していく息子の関係をカメラに収めたのは、イスラエル出身のニル・ベルグマン監督だ。『ブロークン・ウィング』(02)、『僕の心の奥の文法』(10)で、史上初の東京国際映画祭東京グランプリを2度受賞した俊才である。文化も言葉も違うイスラエルで作られているのに、日本人の心に訴えかける情緒豊かな作風は、本作にも引き継がれている。



無名の新人ノアム・インベルはディカプリオの再来!?

2人の心を代弁するチャップリンへのオマージュ


この物語にはモデルがいる。脚本家のダナ・イディシスの父と弟のガイだ。彼女がふと、父の死後、弟はどうなるのかと考えたことから、本作は生まれた。子供の頃、弟が好んでチャップリンの無声映画を繰り返し見ていた違和感や、その後自閉症と診断された弟を父が受け止めて、特別な関係を作り上げたなど、イディシス家のエピソードが本作に盛り込まれているという。劇中、血のつながりを超えた親子の絆を描くチャップリンの傑作『キッド』(1921)が、ウリの精神安定剤として何度も登場するのは、そんな理由があるからなのだ。


この実在の親子を再現したのは、『喪が明ける日に』(16)などイスラエルで活躍するベテラン俳優のシャイ・アヴィヴィと、無名の新人のノアム・インベルだ。インベルは、自閉症スペクトラムであるウリを緻密な演技プランで演じ切り、『ギルバート・グレイプ』(1993)の知的障害を持つ少年役で一躍注目されたレオナルド・ディカプリオの再来だと、すでに国内外で評判になっている。彼の父が自閉症スペクトラムの若者の支援施設で働いており、インベル自身も日常的に彼らと触れあってきた背景も味方しているとはいえ、独特の手足の動かし方や視線の外し方など、リアリティある演技と再現力は天才的。本作をきっかけに世界で活躍する俳優になることは間違いないだろう。そして、監督と俳優陣の見事な手腕でイスラエルのアカデミー賞主要賞を総ナメしている。


24時間、ずっと一緒に過ごしてきた父と息子。互いを信じ、思い合う姿が切なくも愛おしい。特別な絆で結ばれた2人の旅立ちに、拍手を送りたくなる感動のヒューマンドラマが誕生した。

これは家族の自立の物語だと思う。

障がいある息子が僕が死んだ後も安心して暮らせるように、息子と働く場所を父としてデザイナーとして作るべく奮闘する僕には、とても身につまされる映画だった。

愛する我が子を出来ればずっと側で見守りたい。

でもいつか我が子の成長を感じ、信じて、親も子も自立しなければいけない時が来る。

いつだってきっと親離れが先で子離れの方が遅いんだよね。

障害がある当事者やその家族の苦悩を知ってもらう機会にもなるけれども、子を持つ親なら必ず訪れるその瞬間を考えさせる作品。


ぜひ、障がいの有無を関係無く全ての親に見て欲しいです。


是非ご覧ください。


Designer 佐藤貴浩




映画情報 『旅立つ息子へ』

©︎ 2020 Spiro Films LTD.


3月26日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開


オフィシャルサイト:https://longride.jp/musukoe/


監督:ニル・ベルグマン

脚本:ダナ・イディシス

出演:シャイ・アヴィヴィ、ノアム・インベル、スマダル・ヴォルフマン


2020年/イスラエル・イタリア/ヘブライ語/94分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/英題:Here We Are/日本語字幕:原田りえ配給:ロングライド

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