「誰か! 早くこの子を!」 ミサ姫が病院の窓口で声を上げる。 その声を聞いた看護師が駆けつける。 「どうしました?」 看護師の女性が声をかけてくる。 ソウジの背中に女の子がぐったりとおんぶされているのを見ると、察した様に待合室のソファを指差す。 ソウジはおんぶした女の子をそっと下ろし、看護師がソファに寝かせる。 看護師がテキパキと女の子の身体を調べていく。 「すごい熱ね。こんなに...
ガシャーン。 ドドドドッド! 「ひえ! 誰か止めてくれぇ〜。かっ、勝手に動いて止まらねぇっぺ〜」 工事用ロボットは人型で、ガラス張りの操縦席には、今にも泣きそうに丸坊主がよく似合う作業員のおじさんが操縦桿を握り、一生懸命に止めようとあちこちのボタンを押している。 「益子〜、大丈夫け〜! 誰か〜!!」 作業員の相方らしい男がしきりに叫ぶ。 8...
「ええー! もう行っちゃうの?」「いやだ、もっと遊ぼうよ〜」 朝から子ども達に囲まれるソウジとケンタ。 「はいはい、お兄ちゃん達はお仕事にいくんだから、わがまま言わないの! 授業の時間よ。みんな学習室に向かいなさい!」「はーい!」 寮母は走り去る子ども達の後ろ姿を優しく見守る。 源じいより少し年下くらいに見える、ふくよかな身体に反してキビキビした動きのよく働く女性である。厳しさの中...
サクラ区の侍団の本部を後にし、電車を乗り換える為に駅のホームで待つソウジとケンタ。 2人はサクラ区の郊外に向かっていた。 黒い風呂敷を背に抱え、車椅子を押すソウジはモバイルフォンで乗り換え案内サービスを睨む。その表情は剣を持ったときとは別人の様に焦っていた。 「大丈夫ですケンタ! 僕に任せてください。いえ、行ったことあるんですが… 1人では初めてで、いえ、問題無いです!」 ...
ガコッ!ガコッ! ケンタは車椅子を降りた状態で、侍団の道場の脇の小屋の前にいた。 車椅子を降りたケンタは両の手を足代わりに移動し、積まれた木の山から木を取り出し、丸太の台の上にセットする。 車椅子から降りたケンタには薪割りの丸太の台でさえ高く見えた。 そして、改めて薪割り台の前に立ったケンタは、両手で斧を持って力強く振り下ろす。 力強い腕の振りの割には、上手く割れず苦戦する。 「ケ...